ウナとライオンを手掛けたウィリアム・ウィオンとは!イギリス史に残る彫刻家の軌跡
最も美しいアンティークコインとして英国ヴィクトリア女王の即位を記念して発行された「ウナとライオン」。こちらは1828年から英国王立造幣局のチーフコインデザイナーであるウィリアム・ウィオンが原版の主任をつとめました。
コイン彫刻家として数々の名作を生み出したウィリアム・ウィオンとはどのような人物なのでしょうか?彼が手かげたイギリスコインは歴史的価値があるものが大変多いです!コラム型式でご紹介します。
どんな人物?イギリス造幣局彫刻師のウィリアム・ウィオン
ウィキペディア(Wikipedia)より画像引用
ウィリアム・ウィオンは、1795年にバーミンガムで生を受けました。コイン彫刻家だった父のもとで技術を学び、やがてロンドンへと旅立ちます。王立芸術院でさらに腕を磨き、1816年には王立造幣局の副彫刻家に抜擢されます。
1828年には主任原版彫刻師を拝命しますが、それ以前から彼の作品は繊細でエレガントだと高評価を受けており、手掛けたデザインが貨幣に採用されるという栄誉を得ています。
「ウナとライオン」などの代表作を生み出したほか、一般貨幣だけでなくウィリアム4世金メダル(1831年)、ヴィクトリア女王クラウン銀貨(1847年)、万国博覧会を記念した銅メダル(1851年)といった記念金貨やメダルの制作にも携わりました。
ジョージ4世時代からヴィクトリア時代にかけて、1851年に没するまで活躍し、イギリス貨幣史上に比類のない影響を及ぼした傑物です。
15歳で戴冠したヴィクトリア女王の記念5ポンド金貨「ウナとライオン」はどんなコイン?
ウィリアム・ウィオンは英国王立貨幣局の主任を務めながら、様々な貨幣のデザインを考案し、傑作を生み出しました。中でも彼の代表作として名高いのが「ウナとライオン」です。
制作された当時はもちろん、現代でも世界中のコレクターから絶賛されているコインのひとつです。
それほどまでに人を惹きつける要因はどこにあるのでしょうか。「ウナとライオン」が持つ独特の魅力について説明します。
1839年に400枚のみ発行!コレクターの永遠の憧れ「ウナとライオン」とは?
「ウナとライオン」はウィリアム・ウィオンが手掛けたコインの代表作として名を馳せ、世界で最も美しい金貨として愛されています。1837年にヴィクトリア女王が即位したことを記念し、2年後の1839年に発行されました。
コレクション用に5ポンド金貨のみ制作されたプルーフ貨幣であり、発行枚数も400枚と少なく、その希少性から市場価値の下らないコインの代表格です。
表側には18歳という若さで即位した女王の横顔が彫刻されていますが、このコインを世界的に有名にしたのは「ウナとライオン」という名前の元になっている裏側のデザインです。
裏側に彫刻されているのは、エドマンド・スペンサーの叙事詩「妖精の女王」の主人公ウナがライオンに跨っている姿です。
ウナはヴィクトリア女王、ライオンは英国そのものを表現しています。イングランド王国の紋章がライオンであることから、ライオンがウナ(ヴィクトリア女王)を守っている図柄であると言われています。
また、コイン上部に「神が我が歩みを導かれんことを」とラテン語で記されていることから、国家の発展を祈念する意匠でもあります。
世界で一番美しい金貨「ウナとライオン」の評価は?フルセットは海外で1億円落札も!?
「ウナとライオン」は発行枚数が僅か400枚であり、5ポンド金貨のみ制作されました。希少性の高さからほとんど市場に出回ることがなく、高値で取引されるコインの筆頭格です。
未使用品であれば、3,000万円ほどの高値で売買される可能性がある逸品です。しかし、コレクターからの人気を集め続けている要因は希少性だけではありません。
「ウナとライオン」が持つ独特の物語性とそれを表現したデザイン性に起因しており、世界で最も美しいと評される最大の理由でもあります。
コインに彫刻されているヴィクトリア女王は18歳という若さで即位して以来、1901年までの64年の長きに亘って大英帝国の栄華を支えました。
その間、世界中に領土を広めたことから女王は美しさと強さの象徴として愛されました。
ウィリアム・ウィオンはエドモンド・スペンサーが著した叙事詩「妖精の女王」から着想を得て、主人公のウナをヴィクトリア女王、ライオンを英国に見立てたデザインを施しました。
国家の繁栄と成功を願い、女王が国を率いる姿を繊細かつエレガントに表現しています。
「ウナとライオン」だけではない!ウィリアム・ウィオンが残した名作コイン
ウィリアム・ウィオンは英国王立貨幣局の主任を務めながら、傑作と評されるコインを多数手掛けています。いずれもコインマニアたちが血眼になって探している品々であり、ウィリアム・ウィオンを世界的な匠に押し上げた作品ばかりです。
ここでは、代表作「ウナとライオン」に勝るとも劣らない名作の数々を説明します。
1831年に発行された「船乗り王」ウィリアム4世戴冠記念の金メダル
1831年にウィリアム4世の即位と戴冠式を記念して発行された金メダルは発行枚数が1,203枚であり、制作された当時でさえ希少性の高いものでした。
その後、238枚が溶解されてしまったことから、残っているものは965枚のみと言われています。
重さは27.37グラム、直径が33ミリであり、コインの表と裏にはウィリアム・ウィオンを意味する「W.WYONN.S」と彫られています。
このコインの人気が高いのは、市中に出回っている数が少ないことに加えて、ウィリアム4世が歴代の国王の中でも異質な存在であったことが影響しています。
ウィリアム4世は本名をウィリアム・ヘンリーと言い、13歳で士官候補生として海軍に入隊しています。士官や軍艦の艦長を経験し、実戦にも参加しました。
1789年に海軍少将となり、1827年には海軍司令長官に任命されます。
王族でありながら、その優れた功績が認められてクラレンス公の爵位を得るという変わり種だったのです。
英国国民は海軍上がりの王族である彼の度量の大きさを慕い、「船乗り王」という愛称で呼んでいます。
そんな彼と結ばれたのはザクセン=マイニンゲン公ゲオルク1世の娘、アデレードでした。
ウィリアムとは27歳の年齢差がありましたし、ウィリアムは離婚経験者で10人もの子供を連れていました。
お嬢様育ちのアデレードを案ずる声が多かったのですが、2人は国民の心配をよそに仲睦まじい結婚生活を送ります。
そんな2人の仲を象徴するように、戴冠記念の金メダルの表にはウィリアム4世が、裏には妻のアデレード妃が彫刻されています。
1826年単独発行!僅か150枚!ジョージ4世の5ポンド金貨
ジョージ4世の5ポンド金貨は1826年に発行されました。ウィリアム・ウィオンの顔とも呼べる傑作「ウナとライオン」は僅か400枚しか発行されず、コレクターの間では幻の品と言われてきました。
ジョージ4世の5ポンド金貨はさらに数が少なく、発行枚数はたった150枚に過ぎません。ウィオンデザインのコインの中でも特に希少性の高い金貨で、ほとんど市場に出回ることがない品です。
重量はおよそ40グラム、直径は36ミリで希少性はもちろん、緻密な造りが最大の魅力です。表はジョージ4世の横顔が彫刻されており、短髪のクセが細やかに再現されています。
しかし、なんといっても裏面が特徴的です。ライオンとハープなどがデザインされた紋章、王冠、ベールの精巧さが高く評価されてきました。ウィオンは多くのコインを手掛けていますが、この金貨はウィオン初期のデザインでありながら最高傑作級の出来栄えだと称えられています。
約200年前に制作されたコインとは思えない時代を超えた華麗さが刻まれていることから、現代技術を持ってしても再現することは不可能だと言われています。ジョージ4世は素行の悪さが悩みの種で、数々のスキャンダルに彩られた人生を送りました。「快楽王」と揶揄された国王で、国民からの人気は弟であるウィリアム4世とは比べものになりません。
しかし、発行されたコイン数の少なさや芸術性と技術性に富んだ作品であることから、投資目的や資産として収集したいと思うコレクターは絶えません。
世界初の国際博覧会!ヴィクトリア女王"アルバート公がデザイン・ロンドン万国博覧会記念の銅メダル
ウィキペディア(Wikipedia)より画像引用
万国博覧会記念の銅メダルが発行されたのは1851年のことで、ロンドン万博を記念して制作されました。この万博は世界初の国際博覧会であり、ロンドンのハイドパークに会場が設営されました。
建物の外観や会場の様子から水晶宮(クリスタルパレス)万博と愛称がつけられ、成功が期待されました。事実、600万人以上の入場者数を記録するほどの賑わいでした。このロンドン万博を支えたのは、ヴィクトリア女王の夫・アルバート公でした。当時、彼は王立技芸協会の会長として活動しており、ライバル国だったフランスが万博開催にこぎつけられなかったことを知り、なんとしてもイギリスで「世界初」を実現したいと熱望します。自ら万博に融資し、プロモーターとして成功に尽力したのです。
彼の思いは届き、万博は大成功を収めます。1851年の5月1日から10月15日までの間に、186,000ポンドの利益を生みました。この利益によって、ヴィクトリア"アルバート美術館をはじめ、サイエンス・ミュージアムやロンドン自然史博物館がサウス・ケンジントンに設立され、イギリスの芸術や史学の発展に大きく寄与することになりました。
そんな彼の情熱と貢献は、ウィリアム・ウィオンがデザインした銅メダルにも表現されました。メダルの表にはヴィクトリア女王とアルバート王子が並んで彫刻されており、150年経った今でも高い人気を博しています。イギリス金貨やアンティークコインの買取は価値がわかる高価買取専門店こちら買取本舗へお任せ!
イギリス王立造幣局の主任を務め数々のコインを残したウィリアム・ウィオン。そのウィリアム・ウィオンが手掛けた世界的に有名なコインについてお話しましたが如何でしたでしょうか?
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