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2023.12.01 古銭買取

古銭収集家の素晴らしき古銭ライフ ~第1回~

ライターM

古銭の知識に長け、さまざまなコレクションを所有している収集家の加藤伸一さん。そんな加藤さんに、古銭にまつわるあれこれをインタビューする企画が始動!

第1回目は、加藤さんにとっての古銭の魅力などを大いに語っていただきました。

1.「天保通宝とか寛永通宝とかは、作った場所によって顔が違うんですよ」

加藤さんにとって古銭とは?

ライターM

まず、古銭とは?というところからお聞きしたいのですが、加藤さんにとって古銭とはどういうものなのでしょうか。

古銭収集家

加藤さん

いわゆる古銭っていうのは、明治以前のものなんですよ。江戸時代、平安時代も全部含めてなんですけど。平安時代っていうのはお金っていうものがないんで、物々交換の時代。

お金を使いはじめるっていうのが、戦国時代の後半から江戸時代にかけてなんです。で、お金を作れるようになったのは江戸時代なんですね。それまでは、中国の貨幣を利用して、それをお金として流通させたっていう経緯があったんです。

だから僕らが一般的に古銭というのは、明治以前のもの。で、明治、大正、昭和のお金は「近代銭」って言い方をするんですね。古銭ていうのはこういう部類(コレクションを見せてくれる)。「天保通宝」とか「寛永通宝」っていうこういうお金を使っていたんですよね。これが江戸時代。

僕が中心に集めているのは、その古銭と呼ばれているものばっかりなんですよ。近代銭ってなってくると、興味はあるんだけど、どれも同じ顔をしている……全部作りが同じなんですよ。銀貨にしても銅貨にしても白銅貨にしても、ただ年号が違うってだけで全部同じ顔をしている。

こういう天保通宝とか寛永通宝とかは、作った場所によって顔が違うんですよ。顔が違うというか、柄が違うというのかな。例えばこれ。大阪に難波ってあるじゃないですか。その難波の銭座で作られたものなんですけど、これ一文銭なんですね。

で、こっちは日光の銭座で作られたもの。同じ寛永通宝なんだけど大きさも違うし、字体も違うんですよ。

この2枚は一文銭で、いまの額面に換算するとだいたい40円くらいなんですね。で、こっちは同じ寛永通宝なんですけど裏に波が入っているんです。波が入っているものは全部四文銭。いまの額面に換算すると1枚160円くらいですね。

だから、江戸時代の子どもはこれ1枚もらうと大喜びで、お菓子を買いに行ったり、おもちゃを買いに行ったりできたっていう。まあ、一文だとちょっと厳しいんで、四文銭をもらうと子どもがものすごく喜んでたって時代ですよね。

四文銭は江戸時代のポピュラーなお金?

ライターM

この波がある四文銭はポピュラーなものだったんですか?

古銭収集家

加藤さん

そう。ポピュラーというか、江戸時代も後期になってくると波がある四文銭のほうが多くなっていったという。江戸時代は基本的に全部寛永通宝です。

で、江戸時代の後期になると文久時代っていうのがあったんですけど、そのときは「文久永宝」っていうお金になるんですよね。時代によって名称が変わるんですよ。

その後、明治になるわけですけど、明治時代の初期はお金を作っていなかったんで、江戸時代のお金を使っていたんですよ。

でも、明治4年以降、明治政府がこれはもうお金として使えませんよ、という通達を出して、明治政府が発行した1円金貨だとか50銭、20銭金貨だとかが一般的に使われるようになっていったという時代背景があるんですね。

使われなくなった江戸時代のお金の行方は?

ライターM

使われなくなった江戸時代のお金はどうなってしまったんですか?

古銭収集家

加藤さん

廃棄ですね。もしくは、自分の自宅にとっておいた。戦争中に銅がものすごく少なくなってしまったんで、お寺の鐘とか一般の家庭から銅貨が供出されて、それが武器に変わったっていう話もあります。

2.「古銭を残していかなきゃいけない、それはやっぱり江戸の文化じゃないですか」

古銭を集めだしたきっかけは?

ライターM

加藤さんが古銭を集めだしたきっかけを教えてください。

古銭収集家

加藤さん

興味持ったのは小学校4年生のときかな。当時、切手と古銭のブームになったんですよ。で、マンガ雑誌の裏を見ると古銭の店の広告ばっかりだったんで。

僕、その当時小田原に住んでいまして、小田原にはそういった店ってないんですよ。なので、通販に頼って、そこからいっぱい買うようになって集めていたんです。それで、仲間が増えていったんですね。

それがまた楽しいんですよ。分からないことがあれば、僕の先生が新橋にいるんで持ち込んでいろいろ聞けるんで、それもものすごく楽しい。

古銭は永遠のテーマ、分かりきることは難しい。

ライターM

古銭に詳しい加藤さんに、さらに先生がいるというのがすごいですね。

古銭収集家

加藤さん

いや、もう分からないですよ。これはもう、永遠のテーマ。分かりきるって絶対ないと思うんですよ。ものすごく奥が深いんで。

例えばね、これは茨城の穴銭の母銭なんですけど、「日立」「大子」「背」「降久」ていうふうに名称が1枚1枚ついているんですよ。で、裏を見ると久の字。これは江戸時代の後期、文久時代に作られたものなんで、久の文字が入っている。

こういう覚え方を1枚1枚していかないといけないんで、なかなか覚えられないんですよ。

古銭の魅力とは?

ライターM

なるほど。では、加藤さんを子どもの頃から捉えて離さない古銭の魅力を教えてください。

古銭収集家

加藤さん

江戸時代の庶民の使ってたものは「通用貨」って言い方をするんですけど、僕が主に集めているのは通用貨を作る基になった「母銭」なんですよ。母銭は作りがものすごくキレイ。

それで、これを集めようと思ったのは、“誰かがこういうものを残してあげなきゃいけないな”っていう気持ちからで、ようはこれは文化財なんですよね。古銭を残していかなきゃいけない、それはやっぱり江戸の文化じゃないですか。

そういう形で僕はこの母銭に関しては力を入れて集めています。今ここに持っているもの以外にも、もっと種類ありますよ。僕は袋に入れて持ち歩いていつでも見られるようにして、楽しんでいるんです。

古銭を大切に肌身離さずに持ち歩いて!

ライターM

財産を持ち歩いているんですね(笑)

古銭収集家

加藤さん

そうですね(笑)。今日持ってきたなかで一番高いのは、これかな。天保通宝の母銭なんですけど、材質が錫(すず)なんですよ。一般に通用していたのは銅だったんですけどね。

これは、水戸藩でお金を作る場所があって、そこで作ったものですね。で、特徴があって、名前の付け方なんですけど、水戸の「短足宝」といって、それが何を表しているのかというと、この足がこっちより短いんですよ。これ、残っているのが1枚か2枚くらいしかないという。鑑定書をつけて153万しましたね。本当に珍しいものです。

で、こっちは水戸の「背異」というのですが、一般の天保通宝とちょっと顔が違うんですよ。これも錫の古銭なんです。鑑定書込みで73万。錫の母銭ていうのは残っていないんですよ。材質がすごくやわなので、痛みがものすごく激しい。

だから、本当にちゃんと保管していないとダメになっちゃうんです。こんなキレイな状態で残っているのはなかなかないですね。見た瞬間即決で買いましたから。錫はすぐ曲がっちゃうんで、逆に作るときは加工しやすいんですよね。

だから、最初に錫で母銭を作って、ここからまた型をとって銅の古銭を作るんですよ。これが銅の古銭、いわゆる通用銭なんですけど、母銭と並べてみると、母銭のほうが字体がキレイなので一目瞭然ですよね。でね、重ねるとなおさら違いが分かるんですよ

母銭のほうが一回り大きいんです。やっぱり型をとるんで、通用銭のほうが縮まっちゃう。あと、母銭は通用銭にある霧の刻印がどこにもないんですよ。それも母銭か通用銭かの判断の基準になるんです。

天保通宝の短足宝(左)と背異(右)。実際は2つともほぼ同じ大きさです。

3.「秋田のほかに仙台もあって、仙台も市場に出てくると高いんですよ」

見た目が一緒にみえても価値が違う穴銭の違いは?

ライターM

穴銭は一見同じようでも価値が大きく異なるものがあるじゃないですか。それはなぜですか?

古銭収集家

加藤さん

まず、作った銭座によっても変わるし、何より作った量によって変わる。作った量が少ないとそれだけ希少性が出てきて若干高くなりますね。これは水戸の「大子」って呼ばれているものですが、よく見ると字が一回り大きいんですよね。

こっちは本座で作られていたもの。本座っていうのは、幕府の許しを得て作っていた銭座なんですけど、そこでは「広郭」「長郭」「細郭」「中郭」の4種類が作られていましたね。

当時は地方にいろんな藩があったじゃないですか。山口の萩だとか福岡だとかで、幕府の許しを得ずに寛永通宝を作ってしまった。密鋳銭というニセ金を作って自分の藩のために使っちゃたんですね。

そんなのがいっぱいあるんです。でも、僕らからしたら同じ寛永通宝で価値はあるんで、集めているんですけどね。これは秋田で作られた天保通宝なんですけど、色がちょっと赤いんですよ。

秋田産の銅を使っているんで赤いんです。それがやっぱり特徴で、字体もちょっと違う。「通」の字が一番わかりやすいかな、ちょっと独特の跳ね方をしているっていうかな。

で、これはさらに秋田のこのお金を母銭にして、秋田藩内で作られたニセ金。だから出来がものすごく悪いんですよ。わりとニセ金で作られたものは作りが悪いものが多いという。

バリエーション多数!天保通宝

ライターM

天保通宝だけでもものすごいバリエーションがありますね。

古銭収集家

加藤さん

そうなんですよ。地方を入れたらものすごい種類がありますよ。さっきの秋田のほかに仙台もあって、仙台も市場に出てくると高いんですよ。逆に値が付かない天保通宝は、だいたい本座のものですね。

ものすごく残っている数が多いんですよ。売れても400円、500円がザラなんですよね。地方のものは残ってる数が少ないから高くなる。字体でどこのものか覚えておかないと、すぐには判断できないですけどね。

一般的によくあるのは、本座の広郭が多いです。中郭はほとんどないんです。

古銭の種類には何がある?

ライターM

天保通宝をメインに収集されていますが、そのほかの主な古銭の種類を教えてください。

古銭収集家

加藤さん

寛永通宝と文久永宝、それとあとは「函館通宝」だとか「宝永通宝」っていう、一回り大きい10文銭がありますね。あとはね、これだけど仙台の四角いお金。「仙台通宝」っていうんですけど、「大様」「中様」「小様」3つの大きさがある。仙台藩で作られたお金ですね。

仙台通宝「大様」「中様」「小様」の3枚。

中々お目にかかれない函館通宝、仙台通宝

ライターM

函館通宝も仙台通宝も初めて見ました。

古銭収集家

加藤さん

あんまり直接見るケースはないと思うんだよね。ほとんど出てくるのは鉄のほうの通用銭なので。逆に雑銭から銅が出てきたら母銭確定。

あと穴銭で言うと、日本で最初のほうに作られた「皇朝十二銭」ていうのがあるんだけど、「和同開珎」とかね。でも、高いんで集めきれないんですよね。

古銭はどのようにして収集している?

ライターM

集めきれないとのことですが、そもそも古銭はどのようにして収集しているんですか?

古銭収集家

加藤さん

僕はこういう珍しいものは、新橋のウインダムっていうコインショップで買ってます。ネットでは買わない。あと、オークションもあるんだけど、物が本物かどうかわからないんで。

母銭も中国で偽物を作って国内に入ってきているらしいんで、そういうのは僕が見ても分からないくらいよくできているらしいです。なので、信頼のおけるお店で買うのが一番です。

古銭の取り扱い方で注意することは?

ライターM

最後に、古銭の取り扱い方なんですけど、自分で洗浄したりするのはいいんでしょうか?

古銭収集家

加藤さん

ダメダメ。銅貨をキレイに見せようとして、液につけて洗ってお店に持ってくる人がいたのね。でも自然の色じゃないんですよ。僕らはそういうのすぐわかるので、絶対洗っちゃダメ。銀貨もそう。洗うと不自然な光沢になっちゃうんですぐ分かる。あと磨いちゃダメ。当時の色を大切にしないとね。

――自然の状態で保管するのが大切ということですね。本日はありがとうございました!


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