日本酒の種類から飲み方、賞味期限、保存方法、有名銘柄まで分かりやすく解説
日本特有の製法で作られ世界にも誇れるお酒として『日本酒』があります。日本酒は、ひとことでは語れないほどに奥が深く、知れば知るほどにその魅力の虜となっていくこと間違いありません。
では、一体どのような魅力があるのでしょうか。本記事では、その基礎部分である日本酒の種類・飲み方・作り方や保存方法などを解説していきます。
日本酒の種類と特徴
日本酒は『普通酒』と『特定名称酒』に分類されます。
普通酒は、原料や製造方法にルールがないため、比較的安価での入手が可能です。その一方で、『特定名称酒』は原料や製造方法により細かいルールが設けられています。
ここでは、日本酒の深い魅力を知るために『特定名称酒』を解説します。
特定名称酒の種類と特徴
酒税法によって定められたルールにより作られた日本酒が『特定名称酒』であり、原料や製造方法などにより3つに大別されます。
(1) 純米酒(じゅんまいしゅ)
純米酒は、米・米麹・水のみで作られた日本酒です。純米酒のうち、精米歩合が60%以下のものを『特別純米酒』と呼び、それ以外は単に『純米酒』と表現します。
また、次に紹介する吟醸酒の特徴も備えた『純米吟醸酒』と『純米大吟醸酒』も純米酒にあたります。
基本的に、醸造アルコールを一切足されていないものが『純米酒』と覚えておくとよいでしょう。
(2) 吟醸酒(ぎんじょうしゅ)
吟醸酒とは、低い温度で時間をかけて発酵させる製法『吟醸造り』が用いられ、精米歩合が60%以下の日本酒を指します。このうち、米・米麹・水に醸造アルコールが加えられ作られたもので、かつ精米歩合が50%以下のものが『大吟醸酒』と呼ばれます。
逆に、吟醸酒の中でも、醸造アルコールは含まれていないものは『純米吟醸酒』と呼び、その上で精米歩合が50%以下のものは『純米大吟醸酒』に分類されます。
(3) 本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)
米・米麹・水に醸造アルコールが加えられた日本酒で、精米歩合が70%以下のものが『本醸造酒』です。このうち、精米歩合が60%以下のもののみ『特別本醸造酒』と呼ばれます。
加えられる醸造アルコールは、原料となる米の重量の10%未満でなければいけません。
各種類の香りや味わい
次に、日本酒の香りや味わいなどの特徴を種類ごとに見ていきましょう。
(1) 米の風味が楽しめる純米酒
米・米麹・水のみで作られた純米酒は、原料本来の味わいを楽しめる点がポイントです。米のうまみや甘み、コクなどが強く感じられるでしょう。
また、口のなかに広がる、ふくよかさも純米酒の魅力です。濃厚な味わいの銘柄が多く、冷えた純米酒はすっきりとした味わいとなり、温めることでうまみが増すため、さまざまな楽しみ方ができます。
(2) 豊かな香りの吟醸酒
低温により作られる吟醸酒は、芳醇でフルーティーな香りが特徴です。口に含んだあとの鼻から抜ける香りを存分に楽しめるでしょう。
味わいは、比較的しっとりとしているため、製造方法と同様にじっくりと楽しむタイプといえます。
(3) 辛口の本醸造酒
すっきりとした味と香りが、本醸造酒の特徴です。他のタイプとは異なる、本醸造酒特有のキレのある風味が楽しめます。
口あたりもよく、酒の魅力が引き出された辛口の味わいです。
日本酒の魅力を引き出す飲み方
日本酒は、そのまま飲んでも十分においしい種類や銘柄もありますが、特定の飲み方で魅力が引き出されるものもあります。ここでは、日本酒を飲む際に意識したい温度や酒器について解説していきます。
(1) 冷酒
『冷酒』とは、日本酒を冷蔵庫などで5~15度程度まで冷やす飲み方ですが、さらに温度によって細分化されます。
『雪冷え』は5度程度、『花冷え』は10度程度、『涼冷え』は15度程度。種類や好みによって調整するとよいでしょう。
冷酒は、日本酒の持つフルーティーな香りが楽しめる飲み方です。芳醇な香りが特徴の吟醸酒のほか、純米や本醸造酒も冷やしすぎなければ豊かな香りと味わいが堪能できます。
(2) 常温
20~25度程度が『常温』であり、『冷や』とも呼ばれます。日本酒本来の味と香りが楽しめる温度と言われています。
夏は少し冷やし、冬は少し温めて温度を調節し、常温とすることが多いです。
はじめて飲む銘柄や、日本酒自体にまだ慣れていない人は、まず常温で楽しむとよいでしょう。
どの種類でも常温で楽しめますが、とくに、米・米麹・水のみで作られた純米酒と相性のよい飲み方です。
(3) 燗酒(かんざけ)
30~55度あたりまで温めて飲むのが『燗酒(かんざけ)』です。日本酒の香りと味を引き出したい際に最適な温度と言えます。
とくに、純米酒や本醸造酒を楽しむ際に適しています。
深いコクも楽しめる燗酒ですが、温度を上げすぎるとうまみが損なわれることもあるため、注意が必要です。また、香りが飛んでしまう可能性が高いため、吟醸酒にはあまり向いていません。
器でも変化する日本酒の味わい
日本酒は、どの器で飲むのかによっても味や香りなどの楽しみ方が変化するのが特徴です。ここでは、素材・大きさ・形に着目し、器ごとに異なる楽しみ方を紹介します。
(1) 素材
日本酒に適した器の素材は、さまざまです。
粘土を固めて焼いた『陶器』は、冷めづらいため燗酒で飲む日本酒に向いています。
器自体に厚みがあり口あたりがよく、日本酒のまろやかさを感じさせてくれるでしょう。また、器ごとに表情も異なるため、自分の口や好みに合ったものを探す楽しみも得られます。
続いて、粘土にガラス質の素材や、陶石を混ぜて作られる『磁器』。
陶器と比べて薄く滑らかな質感の器です。燗酒や常温はもちろん、冷酒にもぴったり。すっきりとしたキレのある味わいを楽しみたい場合に用いられることが多い傾向です。
『ガラス』は、透明なため日本酒の味や香りのほか、色合いや粘度も楽しめます。
ほかの素材と比べて香りや味も弱いため、日本酒特有の風味を邪魔しません。とりわけ、繊細な味わいの銘柄を楽しみたいときに用いられます。
一方で、熱に弱いため冷酒か常温で飲むのに適している素材です。
また、升に代表される『木材』の器も日本酒を飲むのにしばしば用いられます。
木の香りを同時に楽しめる点はメリットですが、日本酒本来の香りは弱まってしまう点はデメリットでしょう。口あたりも同様です。
どちらかといえば、雰囲気を楽しむのに適した器といえそうです。
(2) 大きさ
一口分程度の量が入る『おちょこ』は、温度を大切にしたいときに適しています。サイズが小さいため、香りが広がりにくいのが特徴です。
しかし、すっきりとした味わいが楽しめるため、日本酒の初心者にもよく選ばれています。
『おちょこ』よりも大きな器が『ぐいのみ』です。口へと運ぶ際に、日本酒の香りを存分に楽しめるメリットがあります。
日本酒の魅力を堪能したいときに用いられる傾向です。温度が変わりやすいものの、同じ銘柄で温度による違いを楽しみたい場合には選択肢のひとつとなります。
(3) 形
『お椀型』は、味と香りの両方を適度に楽しめる形の器です。日本酒の持つ風味を損ねづらい形と言えます。
続いて、『ラッパ型』で楽しめるのは、日本酒の香りです。口の中からだけではなく鼻へと直接香りが届くため、銘柄の個性を捉えやすいでしょう。
また、多くの量を口に入れられるため、甘みを味わうのにも適しています。
逆に、口がすぼまっている『つぼみ型』は、日本酒のキレのよさが感じられる形の器です。空気に触れる面積が小さい分、濃厚さが感じらされます。
『ストレート型』は、癖を抑えた味わいとなる傾向があるため、比較的まろやかで、落ち着いた風味となるでしょう。
日本酒の作り方
日本酒の作り方は、細分化すると10以上もの工程となります。ここでは、それぞれの作業を紹介します。
(1) 精米
日本酒の原料となる、玄米の不要な部分を削ります。日本酒の味をにごしてしまう雑味を取り除く作業です。
(2) 洗米・浸漬
不要な部分を取り除いた米を洗い、きれいにしてから水に漬け込みます。米のうまみを引き出すための重要な工程です。
(3) 蒸米
米に蒸気をあてながら熱を加えます。麹菌の働きを、より活性化させるための作業です。
(4) 麹づくり
蒸した米に麹菌をふりかけ、繁殖させます。米が酒となるための工程です。
(5) 酒母づくり
麹と水に酵母と米を加え、発酵させます。酵母の増加により、酒母が作られます。
(6) 仕込み
酒母を入れた仕込み用のタンクに、麹・米・水を複数回に分けて加え醪(もろみ)を作ります。『醪作り』とも呼ばれる作業です。
(7) 搾り
醪を搾り、酒と酒粕に分けます。
(8) 濾過(ろか)
酒を濾過(ろか)します。日本酒に不要な固形物を取り除く工程です。
(9) 火入れ
濾過した酒に熱を加えます。過剰に発酵が進まないよう、酵母の活性化を防ぐ作業です。
(10) 貯蔵
熟成のために、専用のタンクで貯蔵します。酒の風味を整える工程です。
(11) 調合
他の酒と合わせたり水を加えたりして、味などを調整する作業です。アルコール度数の調整も行います。
(12) 瓶詰め
専用の瓶などに詰め、出荷の準備を整えます。
日本酒の賞味期限と保存方法
日本酒をおいしく飲むためには、正しい保存方法を知っておくことが必要です。ここでは、日本酒の賞味期限と保存方法について解説します。
日本酒の賞味期限
日本酒には、基本的に賞味期限が記載されていません。なぜなら、アルコールは菌の繁殖が進みづらく長期的に保存できるからです。
よって、飲むこと自体は製造されてから数年経過しても可能ですが、おいしく飲める状態はそれとはまた異なります。
おいしく飲むことを優先したいのであれば、製造年月から1年以内に飲むとよいでしょう。
1年以内という目安は、未開栓の日本酒の場合です。開栓済みの日本酒は、製造年月から2週間程度であれば本来のものに近い味と香りを楽しめます。
腐敗することはないものの、時間が経過するほどに風味は落ちるため、早めに飲むのがポイントです。
日本酒の正しい管理方法
日本酒には、それぞれに注意事項などが記載されたラベルが貼られているため、ラベルの記載に従った保存方法を厳守します。
基本的に、日本酒の多くは冷暗所での常温保存で問題ありません。ただし、火入れをしていない日本酒の場合は冷蔵庫で保管することが必要です。
いずれも、あまり光が当たらず、振動の影響の少ない場所で保管します。
開栓後も、基本的には冷暗所での常温保存が可能です。開栓後、数日間のうちに飲みきれなかったり、夏場で室温が高くなったりする場合は、冷蔵庫で保管するとよいでしょう。
日本酒の有名な産地と地酒の魅力
日本酒は、原料となる米と水が味を左右すると言っても過言ではありません。米と水は、産地により味や香りが異なるため、日本酒も産地ごとに特色があると言えるでしょう。
ここでは、日本酒の有名な産地と地酒の魅力を掘り下げます。
兵庫県
古くから日本酒が盛んに作られてきた兵庫県のなかでも、とりわけ灘(なだ)は、日本酒を語るうえで欠かせない地域です。兵庫県は、日本三大酒処のひとつとして知られ、日本酒の生産量も1位となっています。
兵庫県の日本酒を支えているのが、原料となる酒米の存在です。山田錦や五百万石、愛山やフクノハナなど、王道の品種から個性派まで、さまざまな酒米が作られています。
兵庫県を代表する銘柄には、特A地区の山田錦のみが使われた大吟醸『龍力』があります。甘みやうまみ、香りが非常に力強く、兵庫県ならではの昔ながらの日本酒です。
兵庫県南西部に位置する播州の米と水にこだわって作られた『播州一献』も代表的な地酒です。辛口のしっかりとした味わいが特徴で、深みのある風味が楽しめます。
京都府
日本酒の生産量が2番目に多い京都府では、特に伏見が産地として有名です。『黄桜』や『月桂冠』など、酒を飲まない人でも知っているような酒造メーカーも京都にあります。
その気候や風土から、繊細な日本酒が多い傾向です。水も非常に良質で、口あたりがよく、やわらかな味わいが京都の日本酒の特徴でしょう。
伏見の水で作られた『英勲』は、優しく上品な味が楽しめる日本酒です。全国新酒鑑評会において10年以上も連続で金賞を受賞するなど、舌の肥えた日本酒好きからも慕われる一品となっています。
『澤屋まつもと』も、伏見の地酒です。柑橘系のフルーティーな香りと米のうまみを両立させた味わい深い日本酒として人気を博しています。
新潟県
米の生産量が1位の新潟県は、米が原料となる日本酒の名産地でもあります。質のよい水が流れているエリアも多く、まさに日本酒造りに適した地域と言えるでしょう。
きめが細かく上品で、かつ辛口の日本酒が多い点が新潟県の特徴です。
王道の日本酒だけではなく、非常に個性的な日本酒も数多く見られます。
新潟県を代表する日本酒のひとつ『八海山』は、どのような食材にも合うと評判のお酒です。香りも優しく、非常にきれいな酒質が多くのファンに好まれています。
『久保田』は、雑味のない味わいで辛口を純粋に堪能できる日本酒です。新潟の人気地酒のひとつであり、やはり、どのような料理とも相性のよい点が魅力となっています。
地酒だからこその魅力とは
地酒の魅力は、その地でしか味わえない銘柄がある点です。
酒蔵の規模もそれぞれであり、出荷数が限られた銘柄も少なくありません。流通量の少ない地酒は、他の地域ではなかなか手に入らないでしょう。
また、地域ごとに細かな製造方法や原料などが異なる点も注目すべきところです。
同じ品種の酒米であっても、地域ごとに風味は異なります。水や気候などにも味や香りが左右される点は、地酒の大きな魅力のひとつです。
現地の料理と相性がよい点も地酒のポイントであり、現地へと赴いて楽しむ理由となります。料理の素材や味付けに合った日本酒が作られていることが多いため、各地域へと足を運ぶと、ワインでいうところのマリアージュが存分に楽しめるでしょう。
日本酒の最高峰と名高い銘柄
ここでは、とくに世界でも高く評価されている日本酒を紹介します。また、自分好みの日本酒を見つけるためのヒントや料理との相性にも触れながら、日本酒の魅力をさらに掘り下げていきます。
出羽桜(でわざくら)
山形県天童市で作られている『出羽桜』は、吟醸酒の先駆けともいえる日本酒です。イギリス王室御用達のワイン商も取り扱っており、海外でも非常に高い人気を博しています。
フルーティーな香りと滑らかな口あたりに加え、独特のうまみが特徴です。繊細な料理によく合う日本酒と言えるでしょう。
獺祭(だっさい)
酒を飲まなくても『獺祭』という名称を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
獺祭は、山田錦のみを原料として作られている日本酒です。日本国内でも高額で取引されており、また、海外でもさまざまな国に流通している人気の逸品となっています。
各国の首脳への贈り物として選ばれたこともある、日本を代表する日本酒です。
梵(ぼん)
『梵』は、ロサンゼルス国際ワインコンペティションや全国新酒鑑評会での受賞歴があるなど、国内外で高い評価を受けている日本酒です。
山田錦と五百万石米で作られたこの日本酒は、うまみが凝縮され、独特の味わいが楽しめます。濃厚な料理に合うため、日本料理だけではなく、西洋料理にも合うと評判です。
好みの日本酒を見つけるためのポイント
自分好みの日本酒を見つけるには、まず、口にしてみることです。
気になる日本酒は、種類やブランド、評価などにあまりこだわらずに飲んでみましょう。さまざまな日本酒を口にするうちに、徐々に自分の好みの種類や産地が絞れてきます。
最初から選り好みしない飲み方が大きなポイントとなっています。
また、普段食べる料理から日本酒を絞り込む方法もあります。
多くの日本酒は、さまざまな料理と一緒に楽しめますが、相性の良し悪しが一切ないわけではありません。料理の味付けの濃淡により相性のよい日本酒も変わってくるため、そうした相性を参考に自分好みの日本酒を探してみましょう。
日本酒と料理のベストマッチとは
米・米麹・水のみで作られた純米酒系は、米本来の味わいが楽しめるため、比較的濃い味付けの料理と合うでしょう。タレ味の焼き鳥や肉じゃが、魚の煮付けや肉料理との相性も抜群です。
フルーティーな風味の吟醸酒系には、刺身やカルパッチョ、魚の塩焼きなど、比較的さっぱりとした味付けの料理が合います。また、天ぷらとの相性もよいでしょう。
本醸造酒系は、味と香りがすっきりとしているため、料理も同様の味付けと合わせます。素材を活かした料理や茶碗蒸し、サラダ、冷奴などとの相性がよいタイプの日本酒です。
日本が世界に誇る日本酒は奥が深く飲むほどに楽しめる
日本独自の原料と製造方法により作られる日本酒は、世界でも人気の高い酒となっています。産地や銘柄が豊富で、それぞれに特徴が異なる点も魅力となるため、非常に追求のしがいがある酒といえるでしょう。
また、酒だけでなく器でも楽しめる点もおもしろいところです。
料理との相性も非常によく、自分好みの日本酒を探し求める楽しみも味わえます。
まずは、さまざまな日本酒を口にするところから始めてみてはいかがでしょうか。
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