ウイスキーとはどんなお酒?定義や製造方法などを詳しく解説!
ウイスキーはスモーキーな香りと独特の味わいが好きだという愛好家がいる一方で、「辛いから苦手」という人やなんとなく手を伸ばしにくいお酒のイメージがある人もいます。 ウイスキーと一口に言っても原材料や産地などで味も香りも異なり、楽しみ方はさまざまです。
そこで、今回はウイスキーとはどのようなお酒なのか、製造方法や人気のウイスキーなどについて解説します。
ウイスキーの定義
ウイスキーについて漠然としたイメージはあっても、詳しいことについてはわからないという場合もあるかもしれません。 そこで、こちらではウイスキーとはどのようなものなのかを解説します。
ウイスキーとは
ウイスキーは蒸留酒であり、蒸留酒という大きなカテゴリーでは日本の焼酎の仲間です。国によって使用する原材料や製造方法、樽での熟成期間などが異なります。
日本でのウイスキーの定義とは、簡単に言えば「原材料に穀物を使用した蒸留酒」「樽で熟成している」を満たしているお酒です。蒸留酒を熟成させる期間は大体3年以上で、超熟成ウイスキーになると10~30年前後もの期間、樽の中で熟成されています。
ウイスキーの製造手順は次のとおりです。
- (1)原材料となる穀物から麦芽を作る
- (2)麦芽に温水を加えて糖化させる
- (3)糖化したものをろ過して麦汁のみを取り出す
- (4)酵母菌を加えて2〜3日ほど発酵させてから蒸留する
- (5)木製の樽で熟成させる
- (6)熟成の途中でウイスキーの味を調整するために、調合する
- (7)さらに数週間〜数年間熟成してボトル詰めをすれば完成
調合後に熟成させることを「後熟」と言います。後熟の際、必要に応じてさまざまな樽に入れ替えて味と香りを変えることが可能です。
ただ、シングルカスクというタイプはあえて調合しません。ボトル詰めする際には加水してアルコール度数を調整するものと、加水しないタイプがあります。ウイスキー本来の味と香りを楽しめるのは加水されていないタイプです。
一般的にウイスキーには賞味期限がありません。熟成させる段階で3年以上かけるものが多いことからもわかりますが、蒸留酒はアルコール度数が高いので雑菌が繁殖する原因になりにくいと言われています。開封後であっても保存状態さえ良ければ、長期間保存可能です。
冷蔵庫で保存すると、ウイスキーの香りが落ちてしまう可能性があります。できればワインセラーが良いですが、なければ扉がついている食器棚でも保存可能です。
ウイスキーの保存場所に向いているのは暗所で湿気が溜まりにくく、高温にならない場所ですので、条件がそろっていれば納戸のような場所でも保存できます。
ただ、ボトルについているのがコルクの場合は、定期的にコルクの状態を確認しましょう。ウイスキーそのものは長期間保存可能なものですが、コルクは経年劣化するものです。
コルクの劣化が原因で、ボトルの中に入っているウイスキーも劣化する場合があります。コルクがついているタイプは、できれば長期間保存せずに早めに飲みきってしまうほうが無難です。早めに飲みきるのが難しい場合は、ウイスキーを清潔な別のボトルに入れ替えましょう。
賞味期限がないと言っても良いウイスキーですが、それはあくまでも保存環境が良い場合であって、保存環境が悪ければおいしさも落ちてしまいます。
古いウイスキーを飲む際には、コルクがウイスキーを吸収していないか、ボトルからウイスキーが外に出ていないかを確認しましょう。そういった状態になっているものは、味や香りの劣化が起きている可能性があるからです。
ちなみに、1989年まではウイスキーのアルコール度数によって特級、1級、2級と表示されていました。特級はアルコール度数43度以上、1級は40度以上43度未満、2級は39度以下のものです。
これらの表示があるものは少なくても34年程度あるいはそれ以上(2023年現在)経過していることになります。保存環境がどのようなものだったのか、ウイスキーの状態などを確認してから飲みましょう。
原材料によって味わいが異なるウイスキー
ウイスキーの味は原材料に何を選択するのかで変わるのが1つの魅力です。原材料の違いとともに、水や製造方法などもウイスキーの味と香りを変えるものとなっています。
(1)ウイスキーで用いられる原材料
一般的に、ウイスキーの原材料としてよく使用されているのが大麦です。そのまま使用するのではなく、大麦を仕込み水につけて発芽させます。
発芽したものは大麦麦芽と呼ばれており、原材料の穀物のデンプンを糖化することが可能です。発芽させていない大麦にはデンプンを糖化する力はないため、必ず麦芽した状態で使用します。
日本で製造されているジャパニーズウイスキーは、必ずこの麦芽を使用しなければならないのがルールの1つです。大麦ならではの芳しさがしっかり感じられるのが魅力となっています。
とうもろこしを原材料にしたウイスキーは、コーンウイスキーと呼ばれています。ウイスキーにする場合、とうもろこしを80%以上使用しなければなりません。
ウイスキーにとうもろこしが使用されるようになったのは18世紀頃と言われています。ウイスキーに使用されている主な種類はデントコーンという、そのままでは食用に向かないタイプです。
デントコーンはデンプンが多く含まれているため、ウイスキー以外では料理などに使用されるコーンスターチの材料や乳牛などの飼料として利用されています。コーンウイスキーはマイルドでほのかな甘みを感じられるお酒です。
ライ麦は、ほかの穀物とブレンドされて原材料に使用されることが多いです。しかし、ライウイスキーに関してはライ麦を51%程度使用しており、スパイシーさとほろ苦さが感じられます。
カクテルのベースに使用されることも少なくありません。ライウイスキーは初心者や万人向けと言うよりは、ウイスキーを好んで飲むような愛好家に向いているでしょう。ライウイスキーでスパイシーさが強いものはペンシルベニアスタイル、マイルドなものはメリーランドスタイルと呼ばれることが多いです。
小麦は、ほかの穀物とともに混ぜ合わせて使用されている原材料です。たとえば、グレーンウイスキー、アメリカンウイスキーなどには小麦が含まれています。
ただ、ウィートウイスキーは小麦が51%以上使用されているお酒なので、まるでパンのような甘みと香ばしさを味わうことが可能です。小麦アレルギーの人はウイスキーを飲む前にあらかじめ原材料を確認しておくほうが安心して飲めます。
ウイスキーの種類
ウイスキーは原材料や製造方法などによって「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」「シングルモルトウイスキー」「ブレンデッドウイスキー」に分けられます。
(1)モルトウイスキー
モルトとは大麦の麦芽のことで、モルトウイスキーには大麦の麦芽を使用しています。モルトを発酵し、単式蒸留機で2〜3回程度蒸留したお酒です。
ただ、モルトウイスキーに使用される大麦麦芽の含有量については国によって違いがあります。例として、日本では大麦麦芽を100%使用しているものがモルトウイスキーです。しかし、アメリカでは大麦麦芽が50%以上含まれていれば、モルトウイスキーとして表示できます。
モルトウイスキーのなかでも1つの蒸留所内で製造されて1つの樽からボトル詰めしたものを「シングルカスク」と言い、希少性が高いです。
モルトウイスキーは1度に1回の蒸留を行う単式蒸留機を使用するので大量生産が難しい反面、各蒸留所で味や香りにこだわったものが造られています。モルトウイスキーは独特の味わいがあることから、「声高な」という意味を持つLoudをとって「ラウドスピリッツ」と呼ばれることも少なくありません。
(2)グレーンウイスキー
原材料はとうもろこし、小麦、ライ麦に加え、糖化するためのモルトです。グレーンウイスキー誕生は、1700年代だったと言われています。当時のグレートブリテン王国ではウイスキー税として蒸留税の引き上げ、麦芽に対する課税などが行われており、ウイスキー業界にとって非常に困難な時期でした。
そこで、スコットランド南部のウイスキー製造者は大麦麦芽より購入しやすい価格だったライ麦や小麦などに注目し、グレーンウイスキーを製造するようになりました。
グレーンウイスキーは1度に複数回蒸留できる連続式蒸留器を使用することが多いので味にクセが少なく、飲みやすいのが特徴です。
大量生産できるのも良いところで、手軽に飲めます。グレーンウイスキーの飲みやすさから、モルトウイスキーと反対で「静かな、寡黙な」という意味を持つSilentをとって「サイレントスピリッツ」と呼ばれることも多いです。
1つの蒸留所で製造したグレーンウイスキーをボトル詰めしたものをシングルグレーンウイスキーと言います。
(3)シングルモルトウイスキー
モルトウイスキーは大麦麦芽のみを使用したウイスキーであり、複数の蒸留所で製造されたものが混ざり合っています。
一方、モルトウイスキーのなかでも、1つの蒸留所のものをボトル詰めしたものがシングルモルトウイスキーです。1つの蒸留所の味が詰まっているだけに、それぞれの蒸留所にとって昔ながらの製法や原材料などにこだわった集大成であると言えるでしょう。そのため、シングルモルトウイスキーは非常に個性あふれた味わいを楽しめるウイスキーです。
シングルモルトウイスキーの魅力は原材料や水、製造方法による違いだけではありません。各蒸留所がある地域の気候がウイスキーの味にも影響しており、「シングルモルトウイスキーは風土が造る」という言葉が生まれています。
熟成する期間が数年単位であるウイスキーは樽によって香りや色合い、味が変化するものです。それに加えて、熟成している場所が、たとえば森林に近ければ爽やかなスッと抜けるような香りや味になります。
(4)ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして造られるのがブレンデッドウイスキーです。
モルトウイスキーならではの深い味わいとグレーンウイスキーのクセのない味が混ざり合い、グレーンウイスキーよりさらに飲みやすいお酒です。そういったメリットがあることから、世界中に流通しているウイスキーの8割ほどがブレンデッドウイスキーであると言われています。
ブレンデッドウイスキーには「人が造る」という言葉があります。これはシングルモルトウイスキーの「風土が造る」と対照的な言葉で、味や香りなどがウイスキーを混ぜ合わせるブレンダーの手にかかっているからです。
どのようなバランスでモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドするかによって、幅広い味と香りを楽しめるのが魅力と言えます。
世界で親しまれている5大ウイスキー
ウイスキーは世界各国でさまざまな種類がありますが、日本では世界で特に人気が高いものが「5大ウイスキー」と呼ばれています。
(1)スコッチウイスキー
ウイスキーといえばスコッチというイメージがある人も多いのではないでしょうか。スコッチウイスキーはスコットランドで製造されており、アルコール度数が40度以上あるのが特徴です。
発酵したアルコール分を94.8度以下で蒸留し、700リットル以上のオーク樽で3年以上熟成したウイスキーを指します。原材料は大麦麦芽、蒸留回数は一般的に2回です。
大麦麦芽の乾燥時にはピートと呼ばれるスコットランド北部の原野に自生する野草などが年月をかけて炭化した「泥灰(炭化があまり進んでいない石炭)」を使用します。そうすることで、ウイスキーには独特のスモーキーな香りと味わいが出るのです。
(2)アイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーはアイルランドで生まれたウイスキーで、ウイスキーの発祥地ではないかと言われている国の1つです。アイリッシュウイスキーの定義は穀物を原料として、麦芽による糖化と酵母菌によって発酵させていることが挙げられます。
ほかには、アイルランドか北アイルランドで醸造から蒸留、熟成まで行っているウイスキーで、熟成を3年以上、アルコール度数を94.8度未満で蒸留したものというのが条件です。また、ボトルに詰めるときのアルコール度数が40度以上でなければなりません。
アイリッシュウイスキーの原材料は、大麦麦芽と発芽していない大麦などを混ぜ合わせたものとなっています。軽くて優しい口当たりで、幅広い人に愛される味です。
(3)アメリカンウイスキー
アメリカンウイスキーはアメリカで製造されているウイスキーを指します。原材料は大麦、小麦、ライ麦、とうもろこしなどさまざまです。
アメリカンウイスキーがほかのウイスキーと異なる点と言えば、仕込み水として使用されているのが硬水である点でしょう。世界各国でウイスキーに使用されている水の多くは軟水が主なので、硬水を使用しているのはアメリカンウイスキーならではだと言えます。
蒸留の際には連続式蒸留機が使用されているものの、蒸留してもアルコール度数は65〜70度前後です。そのため、原材料の香りや味を感じられます。
コーンウイスキー以外は内側をあらかじめ焼いたホワイトオーク製の新しい樽を使用しており、これがアメリカンウイスキー独特の色合いや甘い香りを引き出すポイントです。
(4)カナディアンウイスキー
カナディアンウイスキーは700リットル以下の木製の樽で3年以上熟成する、ライ麦を51%以上使用などが特徴です。カナディアンウイスキーは使用量の制限があるものの、ウイスキーの味や香りを調整する際にカラメルやカナディアンウイスキー以外のウイスキーやワインなどを加えても良いというルールがあります。
カナディアンウイスキーの多くはブレンデッドウイスキーで、ブレンドの割合ではとうもろこしなどを原料にしたベースウイスキーが7〜9割です。ベースウイスキーはさっぱりとした口当たりになっています。
一方、ブレンドするフレーバリングウイスキーは大麦やライ麦などを原材料にしているので、スパイシーでパワフルな味わいです。そのため、軽やかさと重厚さの両方を持ち合わせています。
(5)ジャパニーズウイスキー
ジャパニーズウイスキーは日本で製造されているウイスキーです。種類によって、華やかな香りとなめらかな味わい、甘い香りとコクのある味わいなどが感じられます。
ジャパニーズウイスキーの定義は原材料として必ず麦芽と日本で採取した水を使用、原酒は国内の蒸留所において700リットル以下の木樽で3年以上熟成し、ボトル詰めしたウイスキーとなっています。
ジャパニーズウイスキーで有名なのがサントリーホールディングス株式会社です。同社では「響」「山崎」「白州」「知多」などが人気となっています。また、ニッカウヰスキー株式会社からは「竹鶴」「余市」「宮城峡」「カフェグレーン」といったものが挙げられるでしょう。
原材料や製造した地域などでウイスキーは個性を持つ
ウイスキーには大麦や小麦、ライ麦、とうもろこしなどが主に使用されており、それぞれの材料によって香りや口当たりが異なります。
それに加えて、蒸留所がある地域の気候もウイスキーの味に影響するため、各蒸留所ならではの味を楽しめるシングルモルトウイスキーが人気です。それ以外にもグレーンウイスキーやブレンデッドウイスキーもあるので、さまざまなウイスキーを試して好みの味を見つけてみてください。
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